飲食店にて
長谷川
「この前は、沖縄に行きたいって言ってたのになんだよ急に。北海道に行きたいとか言い出してさ。」
速水
「いいじゃん別に!時間がたてば考えなんて変わっていくもんじゃん!」
長谷川
「いや、そうかもしれないけど。もう予約とかしちゃってるし、仕方ないだろ?いきなり北海道だなんて無理だ。」
速水
「なんでよ!私のために、どこか行こうって言いだしたのあんたじゃん!」
長谷川
「そ、そうだけどさ・・・。この前、沖縄に行きたいって言ったんだから、今更どうしようもないだろ・・・。」
速水
「もういい!長谷川のわからずや!」
長谷川
「おいおい、そんなに怒ることもないだろ。」
速水
「うるさい!私帰る!!!」
(立ち去っていく速水)
長谷川
「お、おい・・・。はぁ・・・。まじで行っちゃったよ。
怒らしちゃったなぁ。どうしよ。後で謝るか・・・?ったくもう勝手な奴なんだから。
すみませーん。お会計お願いします。」
(店を出る)
「 あーもう、どこ行っちゃったんだろ。家にでも帰ったのか?
ちょっと電話でもして」
速水
「おい。」
長谷川
「うぉああ!?ビックリしたぁ・・・。どこ行ってたんだよ。」
速水
「は?知らないし。」
長谷川
「知らないってなんだよ・・・。まぁ、その、なんだ。さっきは悪かったな。俺も強く言い過ぎたかもしれない。また今度、北海道に行こう。そこでうまいもん食おうな。」
速水
「そんなこと、どうでもいい。」
長谷川
「え?」
速水
「そんなことどうでもいい!」
長谷川
「あ、あぁ。だから、悪かったって。申し訳ない。」
速水
「・・・なんでさ。」
長谷川
「ん?」
速水
「なんで・・・。
なんで追いかけてこないの!?」
長谷川
「え?」
速水
「ふつー追いかけてくるじゃん!!なんで追いかけてこないわけ!?信じられないんだけど!!」
長谷川
「え、いや、探そうとはしたんだが・・・。」
速水
「どうしてためらう時間を作ってるのよ!ああいう時はね、机の上にお金を置いて、「おつりは結構です」って言ってすぐに私を追いかけてくるべきなの!!分からないの!?」
長谷川
「え、えぇ?いったい、何に怒ってるんだ?」
速水
「あんたドラマとか見たことないの!?みんなすぐ追いかけてきてくれるじゃん!すぐに!追いかけて!くんの!!」
長谷川
「あ、あぁ・・・すまない。ドラマみたいなことが、すぐにできなくて申し訳ないと思ってる。」
速水
「・・・もういい。」
長谷川
「ちょちょ!今度は何だよ。」
速水
「私・・・逃げるから。」
長谷川
「は?逃げる?」
速水
「長谷川が追いかけてきて、私を捕まえないと許さないから。」
長谷川
「ちょ、なんだそれ!わけわかんねーよ!」
速水
「捕まえないと・・・別れるから!!絶対!別れるから!!」
長谷川
「はぁぁぁ!?さっきから言ってることめちゃくちゃだぞ!」
速水
「めちゃくちゃじゃないもん!筋は通ってるもん!長谷川のわからずや!馬鹿!もう知らない!!」
(速水走ってどこかへ行く)
長谷川
「ちょ、ちょっと待てよ!速水!!」
(息切れする長谷川)
長谷川
「はぁ、はぁ、はぁ。あいつ、足はっや。もう見失ってしまった。
捕まえないと別れるって、もうめちゃくちゃだ。勝手にもほどがあるだろ・・・ったく。
にしても、どこだ・・・。こういう時、あいつが行く場所ってのは・・・。
そうだ。ツイッター!何かあった時、あいつは、だいたい何か言ってるからな・・・。」
速水
「最初の頃は、なんでも楽しかったのになー。この場所も懐かしく思える。」
長谷川
「何言ってんだあいつ。んー最初の頃は・・・・・あ!もしかして、あの公園か!!急ごう!」
(疲れた速水)
速水
「ふぅ・・・どうだろう。気づいてくれないかな。ま、すぐに私を追いかけてこない時点でお察しだよね。
かれこれ20分は待ってるけど、全然来ないな・・・。
もういいや。こうなったらどこまでも逃げてやるんだから!長谷川のバーカ!!」
(息切れする長谷川)
長谷川
「 はぁ、はぁ、おそらくここだろう・・・代々木公園。よく一緒に話してたところ・・・。
んーどこにいるんだ?子供ばっかじゃないか・・・。
(キョロキョロ見渡す長谷川)
あれー?ここじゃないのか?はぁ・・・めっちゃ走ったのに・・・。
もうどこまで行ってんだよ!手あたり次第探すしかないじゃんこんなの。もう・・・。
ツイッターでなんか言ってないかな・・・。」
速水
「よくここで待ち合わせしてたな。私が遅刻しても笑顔でいてくれたのに。悲しいな。」
長谷川
「 あいつ、絶対俺で遊んでるだろ。待ち合わせ場所といえば・・・。
駅だ!駅しかない!あいつ今東京駅だ!もしかして代々木駅から行ってんのかあいつ?もうめちゃくちゃだな!」
速水
「ここでいつも待ち合わせしてたよなぁ。全然待ってないよって言ってたあの頃が懐かしい。それでも、あいつは全然来ない。
思い出の場所を匂わせてるのに。ちゃんとツイッター見てんのかな?もうしーらない!」
長谷川
「ついた!東京駅!いつもの場所は・・・
・・・あら?いないじゃん!嘘だろ!またどっか別の場所に行ったのか!?あいつ、俺の移動時間考えてないだろ。
あーもう!ツイッターだツイッター!」
速水
「うなぎパイ楽しみすぎワロタ」
長谷川
「・・・は?うなぎパイ楽しみすぎワロタ?」
・・・え、あいつ静岡に行ったのか!?静岡に行くつもりなのか!?
まじでいい加減にしろよあいつ。電話電話!
(電話をかける)
うわ、でねーじゃん・・・もう新幹線の中だからか?あーもう!静岡まで行くのかよあいつ!」
速水
「こういう時は現実逃避が一番だよねー!うなぎパイ♪うなぎパイ♪楽しみだなー静岡!
あ、電話来てる。ま、でないんですけどねー!」
長谷川
「この時間にツイートしてるってことは・・・俺が着く30分前にはもう静岡だな。うなぎパイで有名なとこでも調べておこう。
さすがに、30分で用事はすまないだろう。この時間でしっかりと作戦を考えなきゃ。」
「俺が、静岡に着いたら・・・。ん?静岡に着いたらそこで待っておけばよくないか!?そしたらぜったい速水と会えるよな!?そうだよな!?
なんでこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう。それでいいじゃないか。あぁ。そうだ。それでいい。
ツイッター更新されてねーかな。」
速水
「うなぎパイうま!最高!次はしらす丼食べに行く!」
長谷川
「え、もう終わったのか!?え?待てよ。」
「・・・しらす丼?
・・・神奈川か?神奈川なのか!?次は神奈川県なのか!?ちょっと待て!逆戻りじゃねーか!
俺が静岡に着いたら・・・あいつはちょうど神奈川行きの新幹線に乗って・・・って!入れ違いだ!これじゃ俺が静岡に来た意味が!
しかも金!金が!あいつどんだけ贅沢な金の使い方してんだ!散財しやがって!
・・・はぁ。せっかくだから、うなぎパイだけ買っておくか・・・。」
速水
「次は~神奈川~神奈川~♪
しらす丼を食べよう!うん!それがいい!なんかもう追いかけてとかどうでもよくなってきた。食は素晴らしいなぁ。
長谷川ごめんねー。申し訳ないな~私だけ満喫しちゃって~。んふふ~。」
長谷川
「冷静になれ・・・俺。大丈夫だ、絶対に速水を捕まえれる・・・。
えーっと、次は神奈川だろうが、もう時間も夕方だ・・・。さすがに神奈川が終われば帰ってくるんじゃないか?
一度静岡に行ってから、神奈川に行ってるんだ。これは帰ってくる意思のある行動と考えていいだろう。
その時に俺がとるべき行動は・・・。
・・・よし。賭けに出よう。」
速水
「ひゃーしらす丼美味しい!!脳がとける!あーもう一生しらす丼でもいい!最高!幸せ・・・!
なんか、満喫してたらもうこんな時間か・・・。にしてもひっどいお金の使い方したなー。
ま、こういう日があってもいいよね。」
「・・・結局、追いかけてきてくれたのかな・・・。全然捕まえてくれないじゃん。
・・・別れるってことなのかな。」
長谷川のバカ。もう、知らないんだから・・・。」
長谷川
「最初からこうしておくべきだったのか・・・?いや、きっと追いかけた意味はあるはず。大丈夫だ。
俺が待つべき場所はここであってるはず。
ったくうなぎパイにしらす丼まで堪能しやがってあの野郎。一緒に行きたかったのに・・・。
これが最後のツイートかな・・・?」
速水
「うなぎパイにしらす丼!マジでサイコーだった!脳がとけた!私の体はこれでできているといっても過言ではない!それでは帰る!」
長谷川
「はは・・・なんかもう、俺のことなんてどうでもよさそうだな・・・。」
速水
「東京駅着いたー!なんやかんやで住み慣れてるとこが一番いいのかもねー!愛してるぞ!東京!
長谷川の奴、結局私のことほったらかしてさ・・・ほんとあり得ない。」
速水
「もう、ほんとに別れてやるんだか・・・。」
長谷川
「よー。一人旅は楽しかったですか?」
速水
「長谷川・・・。」
長谷川
「いつもの待ち合わせ場所。懐かしいな。」
速水
「は、はぁ?東京駅が待ち合わせ場所なんだから、出待ちぐらい誰だってできるし。得意げな顔しないで。」
長谷川
「どーせそんなこと言われるんだろうなーって思ったよ。」
速水
「私のこと追いかけなかったくせに。どこ行ったのか知らないでしょ!」
長谷川
「どこに行ったかくらい分かってるよ。」
速水
「じゃあ、言ってみなさいよ!」
長谷川
「んー最初は、代々木公園だろ?」
速水
「・・・正解。」
長谷川
「それで次が東京駅。」
速水
「・・・正解。」
長谷川
「んでまさかの静岡県。」
速水
「あってる。」
長谷川
「そしてまさかまさかの神奈川県。」
速水
「・・・ツイッターみた?」
長谷川
「あぁ。ちゃんと見た。」
速水
「そんな、私のツイートみてれば、場所くらい誰だってわかるよ!正解したからっていい気にならないで!」
長谷川
「そんなに言うことないだろ。ちゃんと追いかけたぞ。」
速水
「うそ!どうせ県外に行ったのが分かってから、ずっとここで待ち伏せてただけでしょ!?」
長谷川
「だから、ちゃんと追いかけたって!」
速水
「なら証拠だしてよ!」
(ビニール袋にはいった箱を渡す)
長谷川
「ほら・・・これ。これで、証明にならないか?」
速水
「・・・これって。」
長谷川
「静岡駅限定のうなぎパイ。東京駅じゃ買えない土産だぞ?俺は、ちゃんと追いかけたんだ。」
速水
「で、でも!誰かからもらっただけの可能性も!」
長谷川
「あーもう!めんどくせーやつだな!ほら!うなぎパイの領収書!新幹線の切符!これでもダメか!?」
速水
「・・・ほんとに、追いかけたんだ。」
長谷川
「当たり前だ。」
速水
「神奈川には行かなかったんだね。」
長谷川
「神奈川に行ってたら、今頃こうして出会えてないだろうな。」
速水
「・・・長谷川。」
長谷川
「ん?」
速水
「なんで・・・追いかけたの。」
長谷川
「なんでって。お前が、すぐに追いかけてくるべきなのって言ったからじゃん。」
速水
「・・・そうだよね。」
長谷川
「なんだ?答えに納得いかないのか?」
速水
「いや、なんでもない。ごめん。」
長谷川
「・・・別れたくないからだよ。」
速水
「え?」
長谷川
「別れたくないから。それだけ。」
速水
「な、なに、急に。気持ち悪い・・・。」
長谷川
「なんだよ。ドラマみたいな台詞が好きなんだろ?」
速水
「う、うるさい!もう、わたし帰るから!」
(走りだす速水)
長谷川
「なんでだよ!あ、おつりは結構です!」
速水
「・・・ぷはっ。何してんの、ここ飲食店じゃないし。」
長谷川
「お前がそうしろって言ったじゃん。」
速水
「そういうことじゃないから。バカ。」
長谷川
「あはははははは!もう、帰るぞ。いい加減疲れた。」
速水
「・・・うん。」
長谷川
「おい、手かしてくれないか。」
速水
「え、なに。」
長谷川
「はい、捕まえた。」
速水
「・・・。」
長谷川
「・・・。」
速水
「きもちわる。」
長谷川
「捕まえないと、別れるんだからーって言ったのは誰だったっけなぁ?」
速水
「う、うるさい!」
なんで追いかけてこないの?
登場人物
長谷川 男性
速水の彼氏。速水には振り回されるが、そういうところは速水の良さだと考えている。
速水 女性
長谷川の彼女。ロマンチストな一面を持ってる女の子。ワガママで周りを見るのが少し苦手。